第30回メディコピア教育講演シンポジウム動脈硬化をめぐって◆予防と治療の新しい展開東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座・老年病科教授主な研究領域老年医学、循環器病学(特に高血圧、動脈硬化)、骨代謝学、認知症主な著書編集「実地医家のための高齢者診療ガイド」(同人社)、監修「日常診療に活かす老年病ガイドブックシリーズ(Vol1〜8)」(メジカルビュー社)、編集「老年医学の基礎と臨床1認知症を理解するための基礎知識」(ワールドプランニング)、監修「老年医学の基礎と臨床2認知症学とマネジメント」(ワールドプランニング)、共編「病気予防百科」(日本医療企画)など動脈硬化arteriosclerosisとは、動脈壁が肥厚し硬くなることからその名が由来しているが、病理学的には、粥状(アテローム)硬化atherosclerosis、メンケベルグ型動脈硬化、細動脈硬化の3つに分類される。この中で、粥状硬化は冠動脈、脳動脈、頚動脈、四肢の動脈などに起こり、その本態は血管内膜へのコレステロールの沈着や血管平滑筋細胞の増殖、線維成分の増加などによる血管内膜の肥厚(動脈硬化プラークという)とそれに伴う血管腔の狭窄であり、普通、動脈硬化といえばこのタイプを指す。動脈硬化は、血管壁のもっとも内側で血液と直接接する血管内皮細胞の機能障害がその始まりとされ、それに続く複雑な過程を経て完成する。この過程は、脂質異常症、糖尿病、高血圧、肥満、あるいはそれらが複合した状態であるメタボリックシンドローム、喫煙などがあると加速され、これらが動脈硬化の危険因子とされる所以となっている。動脈硬化は血管腔の狭窄による血流の障害を起こすことで狭心症などの症状を起こすが、心筋梗塞や脳梗塞などのイベントは動脈硬化プラークの破裂により起こるとされる。動脈硬化の診断には、血管内腔の狭窄を映し出す動脈撮影、血流障害を検出する検査(運動負荷心電図、心筋シンチグラム、サーモグラフィなど)、血管の硬さを調べる脈派伝達速度(PWV)などの種々の方法があるが、動脈硬化のある血管の部位や患者の状態により使い分けている。3昭和48年東京大学医学部卒業51年東京大学第三内科入局 同年、三井記念病院内科医員59年東京大学第三内科助手60年テネシー大学医学部生理学教室客員助教授61年 東京大学医学部老年病学教室講師平成7年東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座教授18年東京大学医学部附属病院副院長(兼任)オオウチ大内ヤスヨシ尉義動脈硬化の成因と診断
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