第30回メディコピア教育講演シンポジウム動脈硬化をめぐって◆予防と治療の新しい展開ヤ矢主な研究領域臨床検査医学、血液学、血栓止血学主な著書編著「今日の臨床検査」、「新検査のすべてがわかる本」など食生活を含めた生活習慣の欧米化などの理由により、我が国の疾病構造は大きく変化している。現在では、がんと並び、血管が詰まって発症する脳梗塞や心筋梗塞が、それにより亡くなる方が増え、また、発症後に後遺症が残ったりするなど、重大な問題となっている。これらの病気は、それぞれ、脳、心臓を養う血管に血栓ができて血管が閉塞される病態であり、発症部位が違うことから病名は違っているが、ともに、動脈硬化という全身性の病態を共通基盤としている。そのため、末梢動脈疾患と合わせ、これらはアテローム(粥腫)血栓症という統一した疾患概念で理解されるようになった。言い換えると、アテローム血栓症の克服は、我が国の医療における最も重大な問題の一つということができる。「人は血管とともに老いる」といわれ、今後、高齢化社会が進む我が国においては、いっそう深刻な問題である。アテローム血栓症が発症した場合の治療はたいへん進んでいるが、予防に勝る治療はなく、この発症を予防することが何より重要である。これは、とりも直さず、動脈硬化の発症・進展を抑えることである。血管が厚く硬くなり、血液の流れが悪くなる病変である動脈硬化は、最近の研究成果により、その成因解明と診断方法が日進月歩で進んでおり、生活習慣との関連も明らかとなっている。早期にこれを診断し、日常の生活習慣、食事、運動などに注意することにより、動脈硬化の予防・改善効果が得られることが明らかとなっている。また、必要な場合、適切な薬物療法を施行することにより、血栓症の発症・再発を抑えることができることも明らかになっている。以上より、動脈硬化の危険因子を管理し、発症を予防するため、動脈硬化に関する正しい知識を得ることの重要性は益々高まっている。このパネルディスカッションでは、動脈硬化の発症・進展機序やその診断・予防に関する最新情報を、我が国を代表する専門家にわかりやすく解説していただく予定である。2昭和58年東京大学医学部卒業東京大学医学部附属病院内科59年東京日立病院内科61年東京大学医学部附属病院第一内科平成3年山梨医科大学医学部臨床検査医学助手(この間、平成5年〜7年 米国ワシントン大学へ留学)9年山梨医科大学医学部臨床検査医学助教授15年東京大学大学院医学系研究科臨床病態検査医学助教授同医学部附属病院検査部副部長17年東京大学大学院医学系研究科臨床病態検査医学教授同医学部附属病院検査部部長東京大学大学院医学系研究科臨床病態検査医学教授ユタカ裕トミ冨司会の言葉
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