第30回 動脈硬化をめぐって
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第30回メディコピア教育講演シンポジウム動脈硬化をめぐって◆予防と治療の新しい展開東京逓信病院内科部長主な研究領域内科学(内分泌代謝領域):糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム主な著書「糖尿病の治療と食事療法」(日東書院)、「肥満症教室」(新興医学出版)、「あなたのための健康管理」(簡易保険文化財団)、「ダイエットの方程式」(主婦と生活社)、「メタボリックシンドロームを知る」(三省堂)、「メタボリックシンドローム教室」(中外医学社)など糖尿病の増加は恐るべき速さで進んでいる。糖尿病とその予備群(境界型:耐糖能異常)を合わせた人数は、1997年には1370万人であったのが、2007年には2210万人と、10年間で840万人も増えた。この数字はほぼ国民の6人に1人が糖尿病であることを示している。糖尿病の増加は、糖尿病の合併症も増加させている。糖尿病腎症が増えると、血液透析患者が増えるし、糖尿病網膜症が増えると視力障害も増加する。糖尿病神経症もまた然りである。これらの合併症は、糖尿病三大合併症といわれており、主として細い動脈に生じるため、細小血管障害といわれている。糖尿病には心筋梗塞、狭心症などの心血管疾患、脳梗塞などの脳血管疾患を生じることも知られている。比較的太い血管の動脈硬化を生じるため、大血管障害といわれる。大血管障害は糖尿病になる以前の境界型の時期から既に生じることがわかっている。普通、血糖値をみる時には早朝空腹時血糖を測定することが多いが、空腹時血糖が高くなくても、食後高血糖があると動脈硬化が進み、心筋梗塞が起りやすい。これまでの研究では、心筋梗塞は糖尿病になると糖尿病でない人に比べ3倍起りやすく、境界型であっても2倍起りやすくなる。糖尿病と糖尿病に起因する心血管合併症の予防には、食事、運動を中心に生活習慣の改善を心がけ、体重の増加を防ぎ、肥満にならないことである。10昭和46年東京医科歯科大学医学部卒業同 第一内科医員47年東京都墨東病院 内科51年東京逓信病院 内科平成7年同 栄養管理室室長(兼)8年同 地域連携室室長(兼)11年肥満症診断基準検討委員会委員13年東京逓信病院 内科部長16年東京医科歯科大学医学部 臨床教授メタボリックシンドローム診断基準検討委員会委員17年東京逓信病院 外来総括部長(兼)ミヤ宮ザキ崎シゲル滋糖尿病と動脈硬化

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