腎臓は陸上動物にとって必須の臓器であり、進化の過程で海から上陸した時の環境を体液(血液や細胞間質液)として一定の状態にする役割を持つ。その過程でできるのが尿である。人間は毎日食事として水、電解質〔Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、P(リン)など〕、栄養素(タンパク、脂肪、炭水化物、ビタミン)を取り入れ、それを体内で代謝してエネルギー産生を行い、尿や便から排出する。動物が生きるために使うエネルギーは活動量が増加するほど大きくなり、腎臓ではその代謝産物をより多く排泄しなければならない。腎臓は血液中の代謝産物を濾過により排泄するため、活動量の多い人間では1人の糸球体濾過量(GFR)は180L/日(ドラム缶1本)にも上る。人間の血液量は体重の約7%のため、60kgのヒトでは4L余りとなり、4Lの血液から180Lの原尿が作られる。つまり、血液が1日何回も腎臓を通過して濾過を繰り返しているのである。しかし、濾過だけでは血液がなくなるため、尿細管で濾過した原尿の99%を再吸収して必要な成分を体に戻し、不要な物質だけを尿として排出している。この腎臓が機能低下に陥ると、老廃物の蓄積(特に窒素化合物)、電解質異常(Na、K、Ca、P異常)、ホルモン産生低下(エリスロポエチン低下による貧血など)、血液の酸性化などが起こる。さらに悪化して腎不全になると、血液透析、腹膜透析、腎移植などの治療が必要となる。2021年末の日本透析医学会統計によると、日本の透析患者数は35万人を超えており、さらに増加している。この腎不全を防ぐには早期に腎機能低下を見つける必要があり、そのために慢性腎臓病(chronickidneydisease:CKD)という概念が提唱された1)。はじめに
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