宝函Summary_44-4
12/13

 知床の由来はアイヌ語の「シリエトク」(地の果てや岬を表す言葉)です。 ロシアにあるアムール川の河口でできた氷が、1月下旬頃から知床半島に接岸し、海が真っ白に覆われます。流氷は接岸すると船が壊れてしまうほどの圧力があり、知床の断崖絶壁は流氷による侵食作用と知床連山から流出した溶岩により形成されました。そのため、今でも人が立ち入ることが難しく、流氷が育む豊かな海洋生態系と手つかずの陸息生態系の繋がりから世界自然遺産に認定されました。 春から秋、冬と全く異なった魅力があり、人々を惹きつけています。AIに基づく臨床検査の国際標準化 臨床検査と体外診断検査システムの質的向上を目指すISO/TC212(国際標準化機構第212専門委員会)の2023年総会と各作業グループ会議が、2023年10月3〜5日にスウェーデンのルンド市にて開催された(ルンド総会)。ルンドは北欧の文化や宗教の中心地として繁栄した古都で、現在は名門ルンド大学を拠点とした学園都市として知られる。会議参加中の10月3日、驚きのニュースが飛び込んできた。ルンド大学のアンヌ・ルイエ教授が2023年ノーベル物理学賞を受賞した。ルイエ教授は、「アット秒」のパルス発光を発生させる技術を開発し、電子の動態を観察する研究領域を切り拓いた業績が評価された。電子工学や医療応用において新たな扉を開いた。臨床検査の領域においても、第4次産業革命を牽引する技術革新により、新たな扉が開かれつつある。代表的事例として、人工知能(artificialintelligence:AI)の手法を組み込んだ医療機器や検査情報サービスが展開されている。その手法の応用例として、エキスパートシステム、自然言語処理、画像分析などがある。これに呼応して、ISO/TC212のルンド総会では、AI関連の規格開発についての議論が本格化した。具体的には、ISO/PWI24051-1「臨床検査室─第一部:臨床検査室におけるAIの応用の一般原則」とISO/PWI24051-2「臨床検査室─第二部:デジタル病理とAIに基づくイメージ分析」である。これらの規格開発では、AIの定義に始まり、許容基準の設定、妥当性確認、測定の不確かさ、リスク管理や病理組織イメージ取得の手順などについて議論が開始された。本号においても、技術の進歩と応用に関する記事が掲載されており、乳がんの再発リスクスコア、心筋炎や慢性腎臓病のリスク分類、HTLV-1感染症診断のアルゴリズムなどが紹介されている。これらの個別化医療の最適化においてAIの活用が想定される。本誌のコンテンツが技術の進歩における臨床検査の役割を理解する一助となり、安全で良質な患者診療に貢献することを願う。ISO/TC212の2023年ルンド総会の参加報告を兼ねて、編集後記といたします。(文責:事務局)編集後記 47知床半島(北海道)宮地 勇人東海大学 名誉教授/新渡戸文化短期大学 学長

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る