奄美大島は、鹿児島県と沖縄本島のほぼ中間の洋上に位置し、日本の離島で佐渡島に次ぐ2番目に大きな島です。面積の8割が森で、貴重な動植物が多く生息する豊かな自然から「東洋のガラパゴス」とも呼ばれています。奄美大島といえば“自然”を一番に思い浮かべるかもしれませんが、輪になり“あらしゃげ”と呼ばれる歌のスピードをどんどん上げて踊る“八月踊り”や“シマジューリ”と呼ばれる鶏飯や油そうめんなどの郷土料理、泥染めが特徴的で世界三大織物にもあげられる絹織物の“大島紬”など、琉球と薩摩の文化や営みが交差しています。奄美大島は歴史と伝統、世界自然遺産として様々な魅力のある島です。 毎年10月発刊号の編集後記を執筆する機会をいただいています。昨年は猛暑に関連して、赤とんぼと気温の関係について紹介しましたが、今年も「酷暑」と表現される暑さの日が続きました。これはわが国に限ったことでなく、米国、欧州そしてアジアでも熱波による被害が出て、グテーレス国連事務総長のいう「地球沸騰の時代」そのものと感じました。毎日の天気予報では、最高気温が35℃を超える「猛暑日」が何日連続しているかが話題になっていました。天気予報などで用いる予報用語の中に「猛暑日」が熱中症とともに追加されたのは2007年で、それ以前には存在しませんでした。このことからも、35℃以上の気温を観測する機会が増えてきていることが想像できます。気象庁ホームページに「全国の日最高気温35℃以上の年間日数の経年変化(1910~2022年)」が示されています。統計期間の最初の30年間(1910~1939年)の平均年間日数(約0.8日)に比べて、直近30年間(1993~2022年)の平均年間日数は約2.7日で約3.5倍に増加しています。全国の猛暑日の年間日数は、100年あたり2.1日増加しているとなっていますが、今年の夏の暑さを経験した身には納得できない数字です。この統計では、都市化の影響が比較的少なく、長期間の観察が行われている地点から、地域的に偏りなく選ばれた13地点を「全国」としています(北海道から石垣島)。ニュースで全国最高気温と報道された都市・地域は含まれていませんし、いわゆるヒートアイランド現象の影響を受ける地域も含まれていません。したがって、猛暑日の日数に関しては、われわれの実感とは違っていますが、長期間の観察で猛暑日が増えてきていることは確実であるといえます。 今号も多くの分野に関する興味深い内容になっています。専門あるいは専門外に限らず、新しい知識に触れていただき、日常診療で役立つポイントや臨床検査についての知識をアップデートしていただければと思います。 本冊子がお手元に届く頃は秋の学会シーズンで、対面での参加が増えると思いますが、読者の皆さんにとって、健康で実り多い秋になることをお祈りします。(文責:事務局) 47奄美大島(鹿児島県)編集後記登 勉三重大学 名誉教授
元のページ ../index.html#12