宝函 Vol.44, No.2 2023_P8
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トリアシルグリセロールは、三価アルコールのグリセロールに3つの脂肪酸がエステル結合した化合物である。日常臨床では、トリグリセライド(TG)と呼ばれ中性脂肪という名称で保険収載されている。TGは脂肪組織に蓄えられ、エネルギーが必要な状態になるとリパーゼにより脂肪酸とグリセロールに分解される。血中に放出された脂肪酸は、組織に取り込まれてミトコンドリアでβ酸化を受け、エネルギー産生に使われる。TGは疎水性が強いため、血中ではコレステロール、リン脂質、タンパクとリポ蛋白と呼ばれる複合体を形成している。TGは、カイロミクロンや超低比重リポ蛋白(VLDL)などの粒子径の大きいリポ蛋白に多く含まれる。カイロミクロンは小腸上皮細胞で合成されリンパ液中に分泌されるため、TG値は食後に上昇する。そこで、これまで脂質検査は10~12時間絶食後の空腹時に評価してきた。しかし、2022年に発表された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、空腹時TG値に加えて随時TG値も高TG血症の診断基準に組み込まれた。随時採血の脂質検査も許容される点は、最近の欧米のガイドラインと同じである。本稿では、随時TG値がガイドラインに設定された背景と注意点について述べる。はじめに

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