宝函 Vol.44, No.2 2023
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 小笠原は、海底火山の噴火により隆起してできた東京都の亜熱帯の島々です。「ボニンブルー」と呼ばれる深い青で透明度が高い海に囲まれおり、色とりどりの珊瑚、ザトウクジラやイルカ、アオウミガメ、熱帯魚などの沢山の海洋生物がいます。 本州から1,000kmも離れているため手つかずの自然も多く、アカガシラカラスバトや、木の実や花の蜜を食べるオガサワラオオコウモリ、カタツムリの仲間のオガサワラオカモノアラガイ、パイナップルのようなタコノキ等多くの小笠原固有の動植物があります。 人為的影響により存続に支障をきたす恐れがある絶滅危惧種も多く、今はいかに種を守って共存するかの分岐点になっています。観光で訪れる際は、違う視点で見ても気づきがあるかもしれません。(文責:事務局) 専門領域の国際学会に出席するため、久しぶりにイタリアのミラノに出張する機会があった。ヨーロッパでの入国に際しては、新型コロナウイルス感染症前と全く変わらない状態に戻っており、街中でマスクをしている人はほぼ皆無の状態で、街は旅行者で溢れかえっていた。学会は、人気の観光地から少し離れた近代的な会場で行われた。ミラノの雰囲気とは大きく異なる外観に圧倒されたが、現地参加者人数はほぼコロナ前の状態に復し1万4,000人以上の来場者があり盛況であった。一方で、古い路面電車と古い街並みとがよくマッチし、伝統を残しながら新しいものを取り入れていく気概を、街のあちこちで感じた。ヨーロッパ最古、1088年に創設されたボローニャ大学と同じくらい古い歴史を持つと考えていたミラノ大学は、古い建物を利用しているものの創設は1924年と知り、改めて伝統と革新の融合を肌で感じた。今回の「SRL宝函」第44巻第2号は、ポストコロナを見据えて伝統と革新を織り交ぜたタイムリーな内容となっており、先生方にもご堪能いただけるものと確信している。 検査UPDATEでは、1968年に輸血後肝炎ウイルスとして発見され、既に50年以上の歴史のあるB型肝炎ウイルス感染症を取り上げ、その病態や検査の最新治験をわかりやすく解説していただいた。疾患REVIEWでは、ポンペ病の病型、スクリーニング検査、そして画期的治療薬と、疾患そのものが大きく様変わりしている姿を詳述いただいた。革新的治療の進歩がどれだけのインパクトをもたらしたかよく理解できる。男性癌最多の前立腺癌でも、癌により特異性の高いphi検査、マルチパラメトリックMRIなどの検査法の進歩、治療法の劇的な進歩についてわかりやすくご解説いただいた。治療TODAYでは、話題のiPS細胞を用いた軟骨再生医療を、事例PICKUPでは、検診や診療における随時トリグリセライド値測定、検査ONEPOINTでは、高齢化に伴って近年検査数が増加している自己抗体ANCAについて、そしてSCINEでは、ギフテッドの子どもへの理解と支援と、広い分野にわたるトピックスが取り上げられた興味深い内容となっている。 いよいよポストコロナに向けて始動し始めた世界状況の中、わが国においては、第五類移行後の感染増加などに対する慎重な観察が続いているが、ようやく出口の明るい光が見えてきたように感じられるミラノの青空であった。 53小笠原諸島(東京都)編集後記竹内 勤慶應義塾大学 名誉教授/埼玉医科大学 副学長

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