宝函 Vol.43, No.4_P10 2022
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機械学習などの人工知能技術、3D 造形などの製造技術やIoT などのセンサ技術の発展とともに、ロボットの機能や構造は急速に発展している。特に社会に進出し、人とのコミュニケーションを活発に行うソーシャルロボットは、来たるロボット社会において様々な分野での活用が期待されている。ソーシャルロボットにおいて、より人間らしいロボットをつくることは大きな課題である。受け答えや振る舞いを人間らしく行う研究に加え、見た目を人間に近づけることも重要な研究として位置付けられている1)。現在はシリコーンゴムなどを中心にロボット表面を覆い、人間に外見を近づける方法が主流である。この方法により、写真や映像などでは見た目そっくりな外見を実現できるが、その一方、直接近づいてみると違和感を覚えてしまう「不気味の谷」を乗り越えることは容易ではない。そこで当研究室では、人間そっくりの外見を実現するのであれば、人間と同じ素材、すなわち皮膚組織でロボットを覆うことが一番の近道であると考え、ロボット骨格の周辺に皮膚組織を培養する技術を開発した2)。皮膚で覆われることで、将来、外見の人間らしさだけでなく、生きた組織ならではの自己修復能や特異性の高いセンシング能力などを生かすことができる。また、生体材料は土に還る材料であるため、環境にも優しいロボットを提供することができるようになる。ここでは、当研究室を2021 年3 月に卒業した河井理雄氏が行った研究成果を基に、その可能性について述べる。はじめに

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